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生成AI/LLM時代のエンジニアリングとの向き合い方とは? Ubie×ログラス×Gaudiyが語る【イベントレポート】

2023年5月23日(火)に開催された、特別イベント「生成AI/LLM時代のエンジニアリングとの向き合い方」。

生成AI/LLMにいち早く取り組んできたUbie社、ログラス社、Gaudiyの3社で、プロダクトや業務へのAI活用から、生成AI/LLM時代にエンジニアとして必要なスキルやマインドセット、今後の挑戦に至るまでをお話ししました。そのイベント内容を、長編レポートでお届けします!

第一線で活躍するエンジニアが見据えるAI活用の今、そして未来とは…?

■スピーカー

Ubie株式会社 MLエンジニア 山田 訓平 | @ymdpharm
日立製作所でセンサデータ分析、CyberAgentで広告配信最適化とレコメンドR&Dを経験。2022年2月より現職UbieにてMLエンジニア。直近では新機能のプロダクトオーナーも兼任。スモールチームとお祭り感が好き。

株式会社ログラス VP of Engineering 伊藤 博志 | @itohiro73
ゴールドマン・サックス VP/Senior Engineer、READYFOR 執行役員VPoEなどを経てログラスへ。Kotlin/Spring Bootのバックエンド開発やReact/TypeScript/Next.jsのフロントエンドの開発、フィーチャーチームのエンジニアリングマネージャーを経て2023年5月にVP of Engineering就任。開発組織の全体マネジメントに従事する。

株式会社Gaudiy MLエンジニア 北川 和貴 | @k2_rod
2007年〜2020年まで大和証券でクオンツとしてアルゴリズム取引の開発・運用業務を経験。2020年〜2022年、OLTAで与信モデルとリスク管理システムの開発。2022年10月にGaudiy入社。現在は、レコメンドエンジンの設計・実装や生成AI・Agentシミュレーションを行うAIチームのマネジメントに従事。

■モデレーター

株式会社Gaudiy エンジニア zchee(ちー) | @_zchee_
2015年からGo言語だけを独学で学び始める(ニート時代)。2017年〜2023年までメルカリにて多種雑多な経験。メルペイの立ち上げも。2023年4月にGaudiy入社。Generative AI / LLM関連では、1ヶ月前はPyTorchなにそれ状態でしたが、今はH/A100触ってみたりGKEでKubeflow立てたりVertexAI触ったりしてます。

(左上)Ubie山田さん、(左下)Gaudiyちー、(右上)Gaudiy 北川、(右下)ログラス伊藤さん

Ubie:人々を適切な医療に案内するため、LLMによるユーザ体験向上を模索

山田:本日はよろしくお願いします。Ubieのくんぺいです。Ubieは医師とエンジニアが2017年に創業したスタートアップで、現在、230名程の社員がいます。「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げて、その実現に向けて前進しているところです。

Ubie社・登壇資料より抜粋

皆さん、お腹が痛いな、足が痛いなと思うことがあっても、病院に行かないことって結構あると思うんですね。でも、もしかしたらそれが大きな病気の予兆かもしれない。そんな事態を防ぐために、適切な医療に案内することで世界中の人々の健康寿命を伸ばしたいという思いで、日々サービスを開発しています。

UbieのLLM関連の取り組みとしては、今年の3月頃、ChatGPT、LLM、生成AIなどが世間で盛り上がるにつれて社内でも急速に熱が高まっていき、専任チームが立ち上がりました。

Ubie社・登壇資料より抜粋

具体的な取り組みとしては、一つが技術探求。AI関連の動きはかなり変化が激しいので、最新の動向や性能調査などをして、鮮度の高い情報をキャッチアップしています。

次に、体験構築。UbieはtoCとtoBの両軸でサービスを提供していますが、それらのユーザー体験を、LLMの技術を使ってどう新しく構築できるかというところを模索しています。

3つ目が、データアセットの構築です。社内外のソースからデータアセットを構築できることには可能性を感じていて、生成やフロー構築などに取り組んでいます。

最後が、生産性の向上です。ChatGPTの入力データは、OpenAIの学習データとして使われてしまうので、 会社の機密情報や個人情報に関わるデータをインプットすることはできません。そこでUbieでは、 社内版ChatGPTのようなツールを開発したり、NotionAIやGitHub Copilotなどの便利なツールを社内に浸透させる活動にも取り組んでいます。

ログラス:生成AI/LLM専任チームを立ち上げ、プロダクトビジョンを拡張

伊藤:皆さん、本日はよろしくお願いします。ログラスでVPoEをしております、伊藤と申します。 ぜひ気軽に「いとひろ」とお呼びください。

我々ログラスは、経営管理クラウドのプロダクトを開発するスタートアップです。「良い景気を作ろう。」というミッションを実現するため、日本のあらゆる経営をより良くしていくことで、 各社が業績と時価総額を上げ、日本経済全体が良くなることを目指しています。

そのために、我々が置いているプロダクトビジョンが「MAKE NEW DIRECTION」です。

ログラス社・登壇資料より抜粋

これまでの経営管理は、データの収集・集計といったあらゆる作業に膨大な時間がかかっており、本質的な部分に注力しづらい状況でした。そこで、組織の誰もが、必要な情報を最新の状態で取り出せるようなデータ管理をプロダクトで実現することで、「再現性のある適切な経営判断」を可能にしたいと考えています。

個人的には、ChatGPT-3.5が登場した昨年末頃に色々と触っていたときに「これはやばいことが起きるぞ」と感じていて。年明けにGPT-4が出てきて、会社として本格的にコミットする機運になり、4月に生成AI/LLM専任チームを立ち上げました。

今回の生成AI/LLMの登場は、元々、我々が十数年先に描いていたようなビジョンを、たった数年で実現できるんじゃないかと思わせるほどのインパクトがあったな、と考えています。そこで、今までのプロダクトビジョンを拡張すべく、新たに言語化を進めていきました

ログラス社・登壇資料より抜粋

左側が、AS ISとして現在のプロダクトが解消しているペインです。今までは、 経営判断にまつわるデータの自動化や工数削減などに提供価値がありましたが、TO BEとしては、生成AIやLLMの活用によって、より本質的な経営の意思決定を実現させていきたいと考えています。

また並行して、とにかく新しい技術はどんどんトライアンドエラーを繰り返しながら学ぶ必要があると考えているので、早々にプロダクトに組み込むという意思決定をしました。4月にリリースした「レポート機能(β版)」は、元々は選択肢を選んでレポートを生成するものでしたが、自然言語の質問から出力できるようなUXにして、小さくリリースしました。

関連リリース:経営管理クラウド「Loglass」、誰もが経営指標にアクセスできる「レポート機能(β版)」を提供開始

また、ChatGPTの社内勉強会を実施するなど、社内の業務効率化にもかなり活用しています。 最近の取り組みでいうと、セールス業務の効率化として、インサイドセールスからフィールドセールスへの情報連携の部分を効率化させました。具体的には、商談の音声データから議事録を文字起こしして、その要約まで作成してもらうフローを組んだのですが、結構精度の高いものができまして。今、実務に組み込めないかをトライしているところです。 

Gaudiy:画像生成AIを活用し、ファンの創作活動を後押し

北川:Gaudiyの北川と申します。本日はよろしくお願いします。Gaudiyは「ファンと共に、時代を進める。」というミッションを掲げる、Web3×エンタメ領域のスタートアップです。昨年はシリーズBで35億円を調達し、プロダクトを伸ばしていくフェーズにあります。

僕らのビジョンである「ファン国家」の背景としては、既存のプラットフォームサービスでは、プラットフォーマーが中間で得ている手数料が大きかったり、IP(知的財産コンテンツ)企業にファンのデータを蓄積できなかったりする課題があります。

そういったファンの熱量を証明できて、貢献がきちんと還元される仕組みをつくるために、ブロックチェーンやAIなどの技術を活用したファンコミュニティサービスを作っています。

Gaudiyでも、GPT-3.5が現れたタイミングから取り組み始めたのですが、大きな衝撃だったのが、Googleとスタンフォード大学の共同研究によるヒューマンシミュレーションの論文でした。

その論文では、25体のGenerative Agentを放ったところ、一部のAgentが恋愛したり、クリスマスパーティーを企画したり、その前日に花を飾ったりと、 さまざまな性格のAgentが社会活動を勝手にし始めたという実験結果があって。

初期値を与えただけで、本当に人のような社会活動が生まれているのをみて「これはやばいぞ」という空気になってから、元々社内でAI領域に関心があったメンバーががっと集まり、本格的にコミットし始めました。現在は、AI研究開発チームとして8人くらいで活動しています。

出典:https://arxiv.org/abs/2304.03442

AI研究開発チームでは、主に4つのテーマで取り組んでいます。

ひとつはAI Opsです。GitHub Copilotをいち早く導入したり、 Figmaでデザインからコードを自動生成するプラグインを作ったりと、AIを使った業務効率化を進めています。

次に、IP特化の画像生成モデルです。ファン国家の実現にあたっては、集客力のあるコンテンツを生成し続けることが難しいという課題があるんですね。 そこに対して、クリエイティブ制作のハードルを下げるところに、AIがかなり使えるなと思ってます。

例えば、あるIPのStable Diffusion(画像生成AI)のモデルを作ってみたのですが、 画像データを大量に学習させてプロンプトで出力すると、かなり”それっぽい”画像が出せるくらいまで技術的にはできるようになっています。

この領域を探究することで、今まで絵がうまく描けなくて表現できなかったファンも、やってみたいアイデアをすぐ実現できるようになる。本来持つクリエイティビティを発揮できたり、ファン同士のコミュニケーションを促進するところに取り組んでいきたいと思ってます。
 
3つ目に、ヒューマンシミュレーション。例えば、今まではキュレーションサイトやTwitterとかで好きなIPの情報を追っていたものを、自分好みの価値判断をするAIエージェントをつくることで、自分が好きそうな企画を提案してもらえたりする。他にもカスタマー対応をしてもらうなど、AIエージェントはtoB、toC双方に活用できると考えています。

最後に、組織カルチャーの醸成です。今後、好奇心や、少なくとも新しいものに対して抵抗がない人たちが鍵を握るだろうなというところで、AIなど新しい技術への感度が高い人を集めるための採用ブランディングもPRチームと連携して動いてます。

生成AI/LLMの登場で、エンジニアの働き方はどう変わる?

zchee:皆さん、ありがとうございます。最初のトークテーマなんですが、LLMの登場で、今後エンジニアの働き方はどう変わっていくのか。仕事がなくなるんじゃないかと心配してる人もいると思うんですが、みなさんどう考えてますか? Ubieさんからお願いします。

山田:コードを書く、設計をする、みたいにエンジニアが手を動かす領域が結構ラクになって、他のことに時間を使えるようになった実感はあります。

例えば、今はバックエンドだけど、時間ができたからもう少し低レイヤーの方を深掘ってみようとか、もっとプロダクトの意思決定に関わる方向に進んでいこうとか、そういった変化は出てくるのかなと思います。

自分は、GitHub CopilotがLLM関連のツールでは一番好きなんですけど、圧倒的に便利だなと。そういったツールによって業務がどんどん効率化されて、他のことができるようになる。そういう変化は確実に起きてると思います。

Ubie株式会社 MLエンジニア 山田 訓平さん

北川:僕も、調べればわかることは、ほとんどAIがやってくれるようになったなっていう感覚があります。例えばTerraformとか、初歩的なクエリとか、調べればほぼわかる系のものは、質問さえちゃんとすればGPTが8、9割はバーって書いてくれちゃうので。そういうやらなくていい仕事はどんどんなくなっていくと思います。

逆に言うと、調べてもわからないところ。アーキテクチャをどう組み合わせるか、みたいな上流の設計は残っていくし、低レイヤーのマシンに近いところはまだ全然AIが対応できない。そういう特異なスキルセットとか、あまりWebには流れてない知識とかは、価値が出てくるのかなっていう風に思ってますね。

伊藤:先日登壇したイベントで、「ChatGPTと一緒にスクラム開発してみた」っていう発表をしたんですけど。

どこまでいけるかなと試してみたら、「どういうプロダクトを開発したらおもしろそうか」「どういう要件でつくるべきか」みたいな企画設計から、実際にスプリントを回すところまでChatGPTがやってくれて。フロントエンドからバックエンドまで全部書いてもらって、この間に僕が実際に書いたコードはたった一行だけだったんです。

でも、実は限界もあって。「コードのファイルをインプットして、この差分を返してください」っていう風に毎回言ってたんですけど、大体、そのコードが4ファイル以上またがってくると、適切なコードを提案するのがかなり難しくなってくるんですよね。

なのでどちらかというと、今後のエンジニアの働き方としては、AIを横に置いて、一緒にペアプログラミングするように働くような世界観になってくるのかなと思っています。

で、組織づくりを考えると、正社員や業務委託だけじゃなくて、そこに加えてAIを組織の中でどう活用していくかになっていくのかなと。今後、日本が少子化に向かっていく中でも、最大のアウトプットを出せる世界ができるかもしれないな、みたいな妄想をしてます。

zchee:ありがとうございます。たしかに、AIを横に置いてペアプロとかは、もうすでにやっているエンジニアの方もいますし、共存というか、 飲み込まれない程度に一緒にやっていかないといけない感じがありますね。

「知的好奇心」「選球眼」…活躍し続けるために大事なスキル

zchee:関連する内容になるんですが、 エンジニアとして今後も活躍し続けるためのスキルやマインドセットに対して、考えていることをお聞きしたいです。

北川:やはり「知的好奇心」がキーワードになってくるかなと。AI周りの技術の流れって、ほんと信じられないくらいのスピードで進んでいくじゃないですか。LangChainのライブラリなどを見ていても、コミットのスピードがエグくて、それを見て楽しめないときついだろうなと思ったりします。

コンピューターって電源さえ繋いでれば、24時間365日働き続けるので、人がコンピューター以上に真面目になるのって無理だと思うんですよ。だから「真面目に頑張ってるのに認められない」みたいなモチベーションは、どこかで心が折れちゃうんじゃないかなって。

そう考えると、いかに馬鹿なことを楽しめるかとか、コンピュータができないことを「なんでだろう」「どうなってるんだろう」みたいに探っていく好奇心が一番大事なんじゃないかなと思ってます。

株式会社Gaudiy MLエンジニア 北川 和貴さん

伊藤:よくわかります。 僕も、いかに遊べるかが大事だと思っています。エンジニアって、なにか遊んでみて、その結果、気付いたら身についていた、みたいなことが多いじゃないですか。今のLLMとかAIも同じで、とにかく一緒に遊んでみるというか。遊んでいると、何ができないかがなんとなく肌感でわかってきて、自分のバリューが出せる部分も見えてくるかなと。

あと大事なのは、AIが返してくることが結構間違っていることも多い中で、そこをきちんと見定められる “選球眼” というか、正しさを理解する力。その意味では、やはり基礎的な知識は今後も必要なんだろうなと思ってます。

山田:お二人がおっしゃったことは、まさにそうですね。便利になったからこそ、“知っていることの価値” はむしろ上がると思っています。例えば、過去にクラウドサービスが使われるようになったときのことを思い返すと、便利になったとはいえ、サーバー構築の知識を知っておかないとトラブルが起きた時に対応できないと思うんですね。

それと同じようなことが起こるんだろうなと思うと、生成AIでもできる領域について、より深く知っていること自体がすごく重要だと個人的には思っていて。便利になったからこそ、立ち止まって深堀りして調べる姿勢とかが、すごく大切になるんじゃないかなって思ってます。

北川:ですね。あとは昨日まで役に立っていたことが、いきなり役に立たなくなったりすると思うので、その環境適応力とか、その時にモチベーションを落とさないとか、そういうマインドや姿勢が大事なのかなと感じました。

技術力の差がつきづらいAI時代に、サービスの優位性になるものは?

zchee:ありがとうございます。視聴者からの質問にもいくつか答えていければと思いますが、「AIの技術力の差がつきづらい時代において、サービスの優位性をどう考えていますか?」こちらはどうでしょうか。

北川:今、Gaudiyが考えているのは、人間のフィードバックによって、強化学習のファインチューニングをいかに回せるか

特に日本の企業は、汎用モデルを作ることにおいては、中国やアメリカといったコンピュータリソースもデータも人材も豊富な海外にはおそらく勝てない。なので、オープンデータよりも特定領域のhiddenデータをいかに扱えるかであったり、そのデータをファインチューニングしていけるかがビジネス価値としての差別化につながるんじゃないかと思っています。

伊藤:toB領域のプロダクトでいえば、まだまだAIでは到達できない領域はありそうだなと思っていて。例えば大企業では、複雑な業務システムやその経緯など、表に出ていない情報や取得できないようなデータが結構あるなと。

いつかそれもAIが知れるような時代が来ると思うんですが、その前に、我々のプロダクトがいかに優位性を保てるかでいうと、スピード勝負になってくると思っています。自分たちのプロダクトの優位性を確立しながら、そこにAIも組み込まれた状態をいち早く作っていきたいですね。

山田:僕も近いんですが、サービスの差別化に関しては、ユーザーの体験として、いかにユニークなものを提供できるかにかかっているかなって。 

差別化につながるユニークなデータは、ユニークなユーザー体験から大抵生まれてくるものだと思うんですね。なので結局は「どうユーザーを魅了していけるのか」「ファンになってもらえるのか」ってところが重要なのかなと思っています。

zchee:もうひとつ、組織体制に関する質問です。エンジニアの人数は減らすべきか、どう役割を分担すべきかなど、各社の考える理想の体制を教えてください。

山田:すごく難しい話だなと思うんですが、 あるサービスをつくるのに、必要なエンジニアの人数は、これまでより少なくなるとは思います。

ただ、多様なバックグラウンドや多様なスキルを持ったメンバーが集まって、あーだこーだ言いながらブレイクスルーする的な経験は皆さんしてると思うんですよね。なので、それぞれのエンジニアが何かしら自分の価値を模索して、それを持ち寄ってチームになるみたいな感じだと、すごく理想だなと思いますね。

伊藤:理想の組織体制は、各社違うかなと思いますが、 理想の役割分担みたいなところは考えられそうな気がします。

株式会社ログラス VP of Engineering 伊藤 博志さん

特に生成AIは80〜90%合ってるようなものを作るのがめちゃくちゃうまいので、そこまでを爆速でやってもらって、その後で人間が精度を上げるみたいな分担ができると、自分たちが同じことを実現するために必要なリソースがかなり少なく済むかなと。

だから、人数を減らすべきかというよりも、同じ人たちで、より多くの価値をつくっていけるような世界観なのかなとは思ってますね。

北川:人数を減らすのがいいのかはわからないですけど、確実に1人当たりの生産性はものすごく上がるので、今まで以上に役割は固定しない方がいいんじゃないかという気はしてて。そういう意味だと、チーム編成が柔軟にできるような組織づくりやカルチャーも結構大事なのかなと思ったりしますね。 

"人間のための技術"は不要になる?

北川:僕からもお二人に聞いてみたいことがあるんですが、いいですか?

今、 全く新しい分野の知識のキャッチアップをチームで同時並行に行っている中で、人によってアプローチの仕方が違うなという気づきがあったんですね。例えばモデレーターのzcheeは、実際のコードを見ないと理解できないけど、僕の場合は逆に論文などで理論を理解してからコード見るみたいな差があったりして。そういった新しい領域のキャッチアップの仕方などで、取り組んでいることがあれば知りたいです。

伊藤:ログラスでは色んなアプローチをしていますが、代表的なものとしては、朝にみんなで集まって、AI系ツールをわいわいいじってみる会を開催しています。触りたいけどまだ触れてない人もいたりするので、触るきっかけづくりとして取り組んでますね。

北川:みんなで触ってみるのいいですね。取り入れてみたい。

山田:ちょっと僕からも、自分の妄想の話をしてもいいですか(笑)。僕はJavaとかScalaとか、型がしっかりした言語が好きなんですが、その辺りの技術ってすごく人間のための技術じゃないですか。 人間さえいなければ、あんな技術はいらないと思うんですよ。

で、GitHub Copilotを究極に賢くして、例えばアーキテクチャやエラーのエッジケースみたいなコードも含めて実装してくれます。それなりにパフォーマンスもいいです。みたいになったら、その辺りの技術ってもしかしたら要らなくなるんじゃないの?って思うんですけど。皆さんは、どう思いますか?

zchee:たしかに。型言語はいらなくなるかも。

北川:個人的には二極化が進むのかなと思いました。LLMでブレークスルーだなと思ったのは、やっぱり「冗長性」。今までは、データ入力の型とスキーマを決めて、処理はプログラム言語で決めて、また出力も型とデータを決めてっていうお作法があったと思うんですけど、そこが全部冗長にできるようになった。

自然言語で入力して、自然言語で処理を指示して、自然言語でまた出力して、それをまた次の入力に入れて連鎖できるようになったのが、かなり画期的だなと思っていて。大抵のことは自然言語でできちゃうんですよね。

これは本当にすごいことで、人間の知性にぐっと近づいたなと思っています。一方で、金融取引などの超専門的な世界では、型を決めたりとか半導体を自分で作ったりとか計算特化型のコンピュータを作ったりとか、人間のニーズがあるでしょうね。

今後、生成AI/LLMを通じて各社が探求していきたいこと

zchee:最後に、生成AIやLLMを活用して、今後どんなことに挑戦していきたいかお話を伺えればと思います。では、ログラスさんから。

伊藤:はい。 生成AI/LLM専任チームを立ち上げてから、ここ数ヶ月ほど色々なトライアンドエラーを繰り返しているんですが、まだ確信を持てるところまでは至っていないんですね。

これはAIだけじゃない可能性があって、生成AI/LLMを活用できるポテンシャを見出すところと、その限界がどこにあるのかを見極めるところの両方をやっていく必要があるんだろうなと。それを探りながら、我々が目指すプロダクトビジョン「MAKE NEW DIRECTION」や、その先にある「いい景気を作る」ところに向かっていければと思ってます。
 
個人としては、AIを横に置きながら一緒にプロダクト開発をするみたいな、個人開発はめちゃくちゃ楽しいなと思っていて。プライベートでは、AIとペアプロしながら、無限に時間を使って楽しんでいきたいなと思ってますね。

山田:Ubieは大前提として、徹底的にユーザーやマーケットの声を聞くことをすごく大切にしています。生成AIやLLMはあくまでHOWではあるけれど、新たに武器を手にしたわけなので、それをもって切り込んでいける領域はどん欲に探していきたいなと考えています。 

toC領域に関しては、症状を自覚して病院に行くまでの間で、どういうところで躓きやすいのか、などのデータを我々はある程度持っているので、そこの分析から始めて、最適なHOWを当てるようなことに、どんどんAIを活用していきたいと思います。

個人的には、ChatGPTを携えて、自分が何も知らない領域の勉強をガンガン進めたいなと思ってて。僕は機械学習とバックエンドのエンジニアリングには、経験と知識があるんですが、クライアントサイドの開発って人生でほぼ一度もしたことがないんですよ。

そこにChatGPTという強力な相棒を得たので、これはいい機会だと思って、実はGW中に3日間くらい半分徹夜で試してみたんです(笑)。そうしたら、60点ぐらいのものはすぐに出せて、より詳しく知りたいことを追加で質問すると、効率的にどんどん学べたのが楽しくて。これを繰り返しながら、自分の知らない領域をどんどん知って遊んでいきたいなって思います。

zchee:ありがとうございます。くんぺいさんみたいに、ChatGPTが出てから、徹夜して遊んでるエンジニアって結構多いんじゃないかなと思います。僕としては仕事でもできてるので楽しいんですけども。そういう感じ、エンジニアらしくていいですね。

北川:僕は、会社としても個人としても、近いところがあって。一番やりたいと思っているのは、仮想シミュレーション。マトリックスの世界みたいなものを作ってみたいです。

なぜかというと、金融とかもそうだったんですけど、社会の実験は基本的に繰り返すことができないので、科学が難しいじゃないですか。実現するパスはひとつしかない。

例えば会社でも、人事制度を変えたらどうなるかの結果は、やってみて半年後にわかるみたいな感じで、そのサンプルが一個しか取れないですよね。 そういう社会実験を、リアルに近い仮想空間をつくれたらぐるぐる回せるかなと思っていて、そこをやってみたいと思ってます。

個人的には、eSportsが、戦争の代わりになったらいいなとも思っていて。リアルな戦争をする必要がなくて、ゲームの中で戦争して負けた方が一部の資産を凍結されるとか、最後のエグセキューションのところだけプロトコルで縛っておけば、人を死なせずに戦争のシミュレーションができると思うんです。そういう部分にAIを使うべきかなと考えてて、その実現を、会社とか個人でやっていきたいなっていう風に思ってます。

zchee:各社さんの取り組み、興味深いものばかりでまだまだ聞き足りないですが、時間がきたので以上で締められればと思います。今日はありがとうございました。(了)

さいごに

各社に興味をもっていただいた方は、ぜひ下記の情報もご参考ください!

Gaudiy(ガウディ)

「ファンと共に、時代を進める。」をミッションに、Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を開発・提供するWeb3スタートアップです。NFT、ブロックチェーン、生成AI技術などの先端テクノロジーを強みに、Web3と日本が誇るエンタメカルチャーを掛け合わせ、グローバル規模の事業展開をめざしています。昨年シリーズBの調達を完了し、採用拡大中です!

Ubie(ユビー)

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップです。AIをコア技術とし、症状から適切な医療へと案内する「症状検索エンジンユビー」と、診療の質向上を支援する医療機関向けサービスパッケージ「ユビ―メディカルナビ」を開発・提供。誰もが自分にあった医療にアクセスできる社会づくりを進めています。

ログラス

「良い景気を作ろう。」をミッションに掲げ、2019年5月に創業したスタートアップです。企業の中に複数存在する経営データの収集・一元管理・分析を一気通貫で実現する、次世代型経営管理クラウド「Loglass」を提供しています。「MAKE NEW DIRECTION」というプロダクトビジョンを掲げ、全ての部署が高度に連携し、高速で業績向上に向けて施策を打てる環境を構築します。

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